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危険な隣人は微笑みを浮かべながら近づいてくる。(1)


第一印象が全てを決定づける

 「人は見た目が9割」という本が書店にあった。昔は「ボロを着てても心は錦」で見た目ではないと教えたものだが、近年はあらゆるものが見た目重視になっている。「見た目」を非言語的情報と幅広く捕らえれば、人に限らず「見た目が9割」というのは事実だろう。
 それを上手に利用したのはヒットラーである。ナチスの制服は世界でもっとも美しい制服と言われたし、三島由紀夫も憧れ、楯の会の制服はナチスのそれを意識して作られたとも言われていた。敬礼の仕方から演説の演出まで、ヒットラーは徹底的に非言語的情報を重視した。それ故に、現代の広告宣伝手法はヒットラー(ナチス)に始まると言われるほどである。
 これは裏を返せば、人は見た目に騙されやすいということだ。怖い顔をした男が近づいてくれば身構えて用心するが、優しい顔の人が笑顔で近づいてくれば、つい心を許してしまう。なんの根拠もなくに、だ。

 見た目を決定づけるのは第一印象である。そして人は第一印象で判断してしまう。それほど第一印象は重要である。第一印象が最も強烈な印象として残り、その後の印象を決定付けるからである。
 平たく言えば、ある人や物の第一印象が非常によければ、その後、その人や物から受ける印象が第一印象と異なったり、第一印象に反する行動をしても、それはたまたまだろうと考えてしまう。
 つまり、後の印象でその人物や物の実像を修正していくのではなく、第一印象の方を正しいと思い込み、後に受けた印象の方を逆に修正する心理が働くのだ。
 故に人は第一印象、見た目を大事にする必要があるし、人は見た目に騙されないようにしなければならない。見た目が悪い詐欺師はいないし、いかにも人を騙しそうな顔つきで近づいてくる詐欺師がいないことからも分かるように。
 人が詐欺師にいとも簡単に騙されるのは、この見た目の第一印象を信じ、第一印象がその後の反する情報を否定するからである。「危険な隣人ほど微笑みを浮かべながら近づいてくる」ということを肝に銘じておく必要がある。にもかかわらず、人は諫言を口にする者を遠ざけたがる。
 こうした第一印象の影響は人だけでなく、モノやソフトに対しても言える。これは使いやすいソフトだと最初に感じると、使いやすいソフト=いいソフトと感じ、いいソフトを提供している会社=(悪意のない)いい会社、と判断してしまう傾向がある。

笑顔の裏の別の顔に注意

 我々が現在生活しているデジタル社会は厄介な社会である。一方では我々の生活に利便性を提供する「よき隣人」であり、もう一方では微笑みの裏に、意図するとしないにかかわらず詐欺師の顔を隠し持つ「危険な隣人」でもあるからだ。この厄介な隣人とどう付き合えばいいのか。一定の距離を保ちながら、細心の警戒心を持って付き合う必要があるが、大多数の人はあまりにも無関心、無警戒すぎるように思える。

 「栗野的視点(No.446):”エネミー・オブ・アメリカ”の世界が現実に」で「盗聴社会の怖さ」に対し警告を発したが、その後も情報の流出は止まっていない。それどころか、IDやパスワードの流出はさらに増えている。一部は内部ミスで、また一部は不正アクセスにより。
 例えば無料通話ソフトを提供して最近人気の「LINE」は、同社が運営している「NAVER」サービスに外部から不正アクセスがあり、169万人分のID、メールアドレス、パスワードが流出したと発表した(7月19日)。
 NAVERサービスの中にはオンラインストレージサービスと呼ばれ、写真やファイルをクラウドに保存する「Nドライブ」などがあり、私もこのサービスを利用していた(今回の不正アクセスの発表がある前に、突然、このサービスを11月末で停止する旨の発表が同社からあった)。

 クラウドコンピューティングは写真やデータ等をインターネット上に保存でき、複数のパソコンからアクセスできる便利なサービスである。有料版と無料版があるが、数ギガ程度の比較的少容量なら無料で利用できるため、個人でも複数台のPCを持っているならクラウドを利用しデータの共有を図っている人は多い。
 かく言う私もクラウドサービスを重宝している一人である。昔は出張時はもちろん、事務所から自宅に帰る場合でもいちいちデータをUSBメモリーに移し替えて持ち歩いていた。だがクラウドサービスを利用するようになってからはデータをコピーして持ち歩く必要がなくなり、とても楽になった。

 無料で利用できるクラウドサービスにはよく知られているものだけでもDropbox、Google Drive、マイクロソフトのSkydrive、Yahoo!ボックスなどがある。内容はどこも似たり寄ったりだが、利用する場合のリスクは常に意識しておく必要がある。
 一番の問題はセキュリティーで、パスワードの掛け方がしっかりしていなければ中を他人に覗かれる危険性は高い。
 また、ソフトの機能をよく理解せずに使う利用者側の不注意によるデータの漏洩問題もある。クラウドは複数のPCでデータを共有できるのが最大のメリットだが、複数の人が1つのデータにアクセスできるようにし、データの共有を図る場合はよほど注意する必要がある。利用するソフト(サービス)によっては初期設定で「公開」になっていることもあるからだ。一度、公開してネットに流れた情報(住所録、メールアドレス、写真etc)は「永遠」に取り消すことが出来ない、ということを肝に銘じておかなければならない。
                                              (2)に続く


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